
将棋を題材にしたマンガ作品
作者は「ハチミツとクローバー」でおなじみ羽海野チカ先生
実写映画化やアニメ化もされたメディアミックス展開を行う意欲作の紹介
キャラクター描写が重厚
登場人物が多く
零の家族
川本家
棋士
学校のクラスメイト
これだけでも25人をこえている
その1人1人にドラマがありその人物背景が重厚だ
1つの作品内で複数の小さな作品があるように感じさせる
将棋を題材にしてはいるが本質は彩りある人間ドラマだ
主人公の零は両親を事故で亡くし将棋の棋士である幸田柾近の養子となる
そこで将棋の才能を開花させプロ棋士への階段を上がっていく
柾近には棋士を目指している香子と歩という2人の実子がいるのだが、もらわれてきた零に勝てず辞めさせられる
零は自分が幸田家を壊してしまったと責任を感じ家を出る
高校生と棋士、二足の草鞋をはいた生活をスタートさせる
両親の死を経験した零
親からの期待を損なった香子
この2人の関係値がおもしろい
香子としては自分を負かした相手である零には会いたくないはずなのだが
その零に香子がたびたび接触するシーンがある
一人暮らしをはじめた零の家にあがりこみパーソナルスペースに入り込む親密なやりとりを行う
気丈な性格だが繊細な一面をもった危うい香子にすでに老成したようにみえる15歳の零の対応
ゆがんだ人物描写をみせるシーンに引き込まれてしまいそうな魅力を感じる
作品のアップテンポ
シリアスなシーンもあればギャグテイストなシーンもある
チカ先生作品のシリアスシーンはかなり重たい
それだけに陰々滅々としてしまうが所々にくだけた描写や先生お気に入りの猫のキャラクターが登場する
重くなりすぎないための配慮なのか自然と出来る作風なのか
バランスのとれた構成だと感じる
ヤングアニマルという男性向け青年誌に連載しているが読者は女性比率が高い
去年に開催された羽海野チカ展の来場者はほぼ女性客だった
これは前記にあるようなドラマ部分とコミカルなキャラクター描写の調和がなされている結果といえる
実写映画について
前後編の2部作構成
映画としての尺で終わらせる必要があったためか少しマンガ原作本編とは違った内容
これはこれで1つの3月のライオンだなと思える出来映え
最後を終わらせきらないのはマンガのためかそもそもそういった結末なのか
読者としては気になるところだと思う